かつては、ホストといえば正規雇用のレギュラーホストが主流でした。しかし近年では、学生や副業希望者がアルバイトとしてホスト業界に参入するケースが増え、経営サイドの採用スタイルにも変化が生まれています。
一般的なアルバイトよりも高収入を得やすいというのがホストクラブでのアルバイトの魅力ですが、経営サイドにとってのメリットやリスクについても正しく把握しておくことが重要です。
今回は、アルバイトホストを雇うことのメリット・デメリットに加え、活用しやすいシーンや採用時に押さえておくべき注意点について、経営戦略の視点からご紹介します。
ホストのアルバイトは正規雇用とどう違う?
アルバイトと正規雇用には、出勤日数や給与体系、待遇などに明確な違いがあります。それぞれの特徴を理解することで、より効果的な人材活用を実現できるはずです。
契約条件の違い
レギュラーホストは週5~6日のフル出勤が基本です。一方、アルバイトホストは週1日からでも勤務可能で、1日あたり3~4時間程度の短時間勤務を希望する人も少なくありません。
給与体系においては、両者とも保証給+歩合制を採用する店舗が多いものの、アルバイトは時給・バック率ともにレギュラーより低めに設定されているのが一般的です。
待遇の違い
待遇面でも両者には差があります。たとえば、寮の提供はレギュラーホストが対象であり、アルバイトは対象外とする店舗がほとんどです。
そのほか、賞金制度や各種手当についても、アルバイトは支給額が低いことや、そもそも対象にならない場合があります。キャリアパスの観点からも、基本的には正規雇用者を優先する傾向にあるといえるでしょう。
アルバイトホストを雇うメリット
アルバイトの採用は、コスト面と人材確保の両面で経営を下支えする有効な手段となり得ます。主なメリットを見ていきましょう。
人件費を抑えつつ戦力化できる
人件費の圧縮は、アルバイト採用における最大のメリットです。保証給や歩合の設定金額を抑えられるほか、賞与や特別手当といった固定費の負担も回避できます。
たとえば、売上が立ちにくい時間帯にヘルプとして配置したり、主戦力ではなくサブ的な役割で起用したりすることで、最小限のコストで一定の効果を得ることが可能です。新規オープン時や人材不足時の補填としても柔軟に活用できる点は、経営者にとって大きな魅力といえるでしょう。
幅広い人材を採用できる
ホストクラブの集客は、個々のホストの魅力に大きく左右されます。とはいえ、業界全体として人材の入れ替わりが激しいことから、常にバリエーション豊かな人員をそろえるのは容易ではありません。
そうしたなかで、アルバイトという形で学生や社会人といった多様な人材を迎え入れることができれば、客層の幅も広がり、店全体の雰囲気も活性化します。特に若手を求める店舗や、在籍数をもう少し増やしたいと考えている経営者にとっては、大きなメリットです。
適性があれば正規雇用に切り替え可能
アルバイトからスタートしたスタッフでも、意欲や能力、接客スキルが見込める場合は、レギュラー採用を打診することが可能です。
初期段階ではあくまでも短期雇用で様子を見つつ、現場での実績や成長の兆しを確認できれば、将来的な幹部候補としての育成も視野に入ります。採用リスクを抑えながら、人材の見極めができる点も大きなメリットといえるでしょう。
スタッフ不足などに柔軟に対応できる
イベントシーズンや急な欠員、繁忙期などには、アルバイトが即戦力として活躍してくれます。短期増員やシフト調整の柔軟性が高いため、店舗の営業体制を安定させるには欠かせない存在です。
また、ヘルプや雑務などの補助的業務を担ってもらえば、レギュラーが接客に集中しやすい環境を整えることもできます。
アルバイトホストを雇うデメリット
アルバイトの採用には多くのメリットがある一方で、見過ごせないデメリットも存在します。経営に支障をきたさないように、こうしたデメリットも正しく理解しておくことが肝要です。
定着率が低いと教育コストが増える
アルバイトホストは手軽に始められる分、離職率が高い傾向にあります。
未経験者や学生の場合、接客の基本や社会人としてのマナー、店舗独自のルールを一から指導する必要があり、その負担は決して軽くありません。
それにもかかわらず、早期に辞められてしまえば、せっかくの教育が無駄になる可能性があります。こうした状況が続けば、教育の負担が慢性化し、店舗運営に支障をきたすおそれもあるでしょう。
責任感や売上意識に差が出やすい
アルバイトのホストは、本業や学業の合間に働く場合が多く、責任感や売上への意識についてレギュラースタッフとの間に差が出やすくなります。
ランキングや指名本数といった明確な目標に向けて取り組むレギュラーに対し、アルバイトは「短期間で稼げればよい」と考えている人も多いでしょう。
こうした意識の違いは、チーム内の雰囲気や店舗全体の売上に影響を及ぼすことがあるため、適切なマネジメントが求められます。
顧客対応やクレーム対応が増加する可能性がある
アルバイトスタッフの接客スキルによっては、顧客満足度が下がり、場合によってはクレームに発展することもあります。
特にホストクラブのようにお酒を伴う接客では、場の空気を読み取る力や細やかな配慮が欠かせません。経験の浅いスタッフがその場に応じた対応を取れなかった場合、来店客に不快感を与えるリスクが高まります。こうした事態を防ぐためにも、教育体制やフォローアップ体制の整備が不可欠です。
アルバイトホストが活躍するシーン
アルバイトホストは、特定のタイミングにおいて真価を発揮します。ここでは、活用が効果的な場面についてご紹介します。
イベント前の増員
平常時はレギュラーメンバーで対応可能であっても、イベント期間や繁忙期には来客数が急増することがあります。
こうした時期にアルバイトを採用して一時的に増員することで、安定した接客体制を確保することができます。柔軟に働けるアルバイトならではの特性を活かした人員調整方法だといえるでしょう。
ベテランスタッフのサポート役や裏方業務の補助要員
接客に長けたベテランホストには、なるべく顧客対応に集中してもらいたいものです。
そこで、裏方業務をアルバイトに担ってもらうことで、店全体のサービス効率を向上させることが可能になります。たとえばドリンクの準備やグラスの片付け、店内清掃などを任せれば、レギュラーの負担を軽減できます。
さらに、アルバイトにとっても先輩の接客を間近で学ぶ機会となり、本人の成長につながることも期待できるでしょう。
アルバイトのホストを採用する際のポイント
アルバイトを戦力として迎え入れるためには、採用前の準備と明確なルールの設定が不可欠です。以下の点を重視しましょう。
契約内容を明確にする
勤務日数や時間、給与体系(時給・歩合率・バック率など)、交通費の支給有無や研修期間などの基本的な条件は必ず書面で提示し、相互の認識にズレが生じないようにしましょう。
アルバイトは出勤の融通が利きやすい反面、曖昧な取り決めではトラブルにつながりやすいため、ルールの明文化の徹底が求められます。
身分確認や年齢確認を徹底する
未成年者の飲酒など、法律違反を未然に防ぐためには、身分証明書の確認を徹底する必要があります。
ホストクラブ自体は18歳以上であれば勤務可能ですが、飲酒・喫煙は20歳以上でなければ認められていません。特に20歳未満が誤って飲酒することのないよう、上手な断り方を含めて教育することが大切です。ルールを守る姿勢を貫くことで、店舗の信頼性も高まります。
学業や本業と両立は可能か確認する
学生や社会人など、本業を持つ応募者に対しては、あらかじめ勤務可能な時間帯や生活リズムを確認しましょう。
無理なシフト設定は本人にとっても店舗にとってもリスクとなり、離職やシフト崩壊の原因になります。面談や体験入店などを通じて、両立の可否や本人の意欲を見極めることが大切です。
SNSやLINEの使用ルールを共有する
SNSやLINEは便利な反面、トラブルの火種にもなり得ます。お客様との個人連絡の可否、店内での写真撮影や業務内容の投稿に関するルールは具体的に明文化し、事前にしっかりと伝えておくことが重要です。
不適切な投稿は店舗の信用を損ねるリスクがあるため、アルバイトにも丁寧に説明し、全従業員の理解と意識づけを徹底しましょう。
教育体制を整える
お店を訪れるお客様にとって、接客するホストがレギュラーかアルバイトかは関係ありません。どのスタッフにも一定の接客品質が求められます。アルバイトであっても、基本的なマナーや店内での立ち居振る舞いについては、必ず教育を行いましょう。
また、教育はスキルの伝達にとどまらず、ホストとしての意識や心構えを育てる機会でもあります。意欲のある人材にとっては、スターホストへの成長のきっかけとなるかもしれません。教育は一時的な労力ではなく、将来への投資と捉えることが大切です。
まとめ
アルバイトホストの活用は、人件費の調整や人材の多様化といった面で大きなメリットがあります。一方で、定着率や意識の差といった課題も避けては通れません。
そこで、あらかじめ課題を把握し、採用時に必要なポイントを押さえておけば、アルバイト人員は経営戦略上の有益な戦力となります。教育やルール整備を徹底し、正規雇用・アルバイト共に安心して働ける職場を目指すことで、店舗の活性化にもつながっていくはずです。